派遣社員として働いていて「契約を途中で終了したい」「次の仕事に進みたい」と思うことは少なくありません。しかし、正社員とは異なる契約形態のため、退職には特有のルールや注意点があります。
この記事では、派遣社員が退職を申し出る正しい方法や、派遣元・派遣先との関係を悪化させずに辞めるコツ、さらには起こりやすいトラブルとその回避方法について詳しく解説します。
派遣社員の基本的な雇用関係
まず前提として、派遣社員は「派遣元(派遣会社)」と雇用契約を結んでいる労働者です。実際に働くのは「派遣先企業」ですが、雇用主ではないため、退職の申し出は派遣元に対して行う必要があります。
▼雇用関係の構造
- 派遣社員 ↔ 派遣会社(雇用契約あり)
- 派遣会社 ↔ 派遣先企業(派遣契約あり)
- 派遣社員 ↔ 派遣先企業(業務上の指示あり/雇用契約なし)
この仕組みを理解しておかないと、「派遣先に直接退職を伝えて終わり」という誤った判断をしてしまい、トラブルの原因になります。
ここで、企業がなぜ派遣社員を活用するのかを知っておくと、退職時の流れや対応にも納得がいきやすくなります。まずは、企業が派遣社員を利用する主な理由を確認しておきましょう。
企業が派遣社員を利用する主な理由
企業が派遣社員を利用するのは、主に以下のような理由からです。
- 繁忙期や人手不足の一時的な対応ができる
- 即戦力としてすぐに現場で働ける人材を確保できる
- 採用や教育にかかるコスト・時間を削減できる
- 社員よりも柔軟な契約が可能で、必要に応じて期間を調整できる
このように、「必要なときに必要な人材を確保できる」柔軟さが、派遣という雇用形態の大きなメリットといえます。そのため、退職は比較的スムーズに進むのが通常です。
派遣社員が退職できるタイミング
派遣社員が退職できるタイミングは、「契約期間」と「退職理由」によって異なります。
契約満了での退職
最もスムーズなのが「契約満了による退職」です。
ポイント
- 契約期間終了の約1ヶ月前に意思を伝えるのが理想
- 退職理由は不要(期間満了により契約終了)
派遣元から契約更新の意思確認があった際に「更新を希望しない」と伝えるだけでOKです。また、次の人材の手配や引き継ぎの準備など、派遣先・派遣元ともにスムーズな対応が必要になるため、早めに意思を伝えることが、双方にとっての思いやりにもなります。特に「後任の手配」には一定の時間がかかるため、退職の意思表示はなるべく早く行うことが、現場への負担軽減にもつながります。
契約期間中の途中退職
原則として、契約途中の退職は「やむを得ない事情」が必要です。たとえば、以下のようなケースが該当します。
- 体調不良や家族の介護など健康・生活上の事情
- ハラスメントや過度な業務負担など職場環境の問題
- 契約内容と実際の業務に大きな乖離がある場合
注意点
契約途中での退職は、派遣元・派遣先の双方に迷惑がかかるため、退職理由の説明と誠意ある対応が求められます。
派遣社員の退職手続きの流れ
派遣社員が円満に退職するためには、以下の手順を踏むことが重要です。
STEP1:派遣元に退職の意思を伝える
派遣先ではなく、必ず派遣元の担当者(コーディネーターなど)に連絡を入れましょう。
例:
「現在の就業についてご相談したいことがございます。可能であればお時間をいただけますでしょうか。」
この時点で「退職したい」という意志をはっきりと伝えることが大切です。
STEP2:退職理由を伝える(必要に応じて)
やむを得ない事情がある場合は、正直かつ丁寧に伝えましょう。家庭や健康上の理由は特に理解されやすいです。
NG例:
- 「飽きたから」
- 「気分が乗らない」
- 「次の仕事が決まったから(契約途中の場合)」
あまりにも自分勝手な理由だと次からお仕事を紹介されなくなる懸念もあります。
STEP3:退職日と手続きの確認
退職日が決まったら、以下の点を確認します。
- 有給休暇の扱い
- 健康保険・厚生年金など社会保険の手続き
- 給与の最終支払い日
- 雇用保険の離職票の発行有無
STEP4:派遣先へのあいさつ
派遣元と相談の上、派遣先にも挨拶を行うのがマナーです。直接伝える場合は、以下のようなフレーズが使えます。
「このたび、契約満了に伴い退職させていただくことになりました。短い間でしたが大変お世話になりました。」
派遣社員が退職時に注意すべきポイント
派遣社員ならではの注意点を押さえておくことで、無用なトラブルを防げます。
派遣先に直接退職を伝えない
先述の通り、雇用主は派遣元です。
派遣先に直接「辞めます」と伝えるのはマナー違反。先に派遣元へ相談しましょう。
契約書を確認する
派遣契約書には「退職の申し出期限」や「途中終了のルール」が記載されていることがあります。事前に内容を確認し、違反しないよう注意が必要です。
無断欠勤・突然の退職は厳禁
正当な理由なく無断で辞めると、「社会保険の資格喪失が遅れる」「次の仕事紹介に悪影響が出る」「損害賠償を請求される可能性がある」といったリスクがあります。
退職後の再就業に影響する可能性も
途中退職が多かったり、勤務態度に問題があったりすると、次の派遣先紹介に支障が出ることも。派遣元との信頼関係を保つことが今後のキャリアに影響します。
よくある退職トラブルと対処法
ケース1:契約と違う業務をさせられる
派遣元にすぐ相談を。契約外業務を強制されるのは法的にも問題があります。
ケース2:退職を申し出たら引き止められる
引き止めは義務ではありません。退職の意志が固い場合は、「やむを得ない理由がある」ことを繰り返し説明し、毅然と対応を。
ケース3:退職の意思を伝えたのに放置される
証拠を残す手段(メールや書面)を使うこと。口頭で伝えても対応されない場合は、メールやLINEで記録を残すと安心です。
ケース4:退職を申し出たら不当な扱いを受けた
労働基準監督署や労働局、派遣ユニオン等に相談可能。派遣社員にも労働者としての権利があります。泣き寝入りしないようにしましょう。
6. 派遣社員の退職に関するQ&A
Q1:退職理由は正直に言わないといけない?
A:正直に言う必要はありませんが、誠実な説明は信頼を保つポイントです。
家庭の事情、体調不良、キャリアチェンジなどが一般的で伝えやすい理由です。
Q2:有給休暇は消化できる?
A:可能です。ただし、契約終了日までに取得しないと無効になる場合もあるので、早めの申請が大切です。
Q3:契約更新を断るとペナルティがある?
A:基本的にありません。契約期間が満了したうえでの退職なら、法的な問題は発生しません。
まとめ|派遣社員も「正しい手順と誠意」で円満退職を
派遣社員として働くなかで、退職を考えるのは自然なことです。しかし、契約形態や雇用関係の違いにより、注意すべきポイントも多く存在します。
ポイントを整理すると:
- 退職の申し出は必ず「派遣元」に
- 契約期間と契約書の内容を確認
- 円満な関係を保つため誠実に対応する
- 無断退職はNG!トラブル回避を第一に
正しい手順を踏めば、スムーズな退職と新たなスタートが切れます。今後のキャリアにもつながるような、前向きな一歩にしていきましょう💡


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