「退職代行を使うなんて頭おかしい」
「そんなやつ、社会人失格。クズだろ」
ネットを中心に、こうした強い言葉が飛び交うことがあります。
退職代行の利用者を否定する声は少なくありません。でも、それは本当に“正しい批判”なのでしょうか?
本記事では、退職代行に対する否定的な意見と、その背景を客観的に見ながら、なぜこのサービスが必要とされているのかを丁寧にひも解いていきます。
否定派の主張には「正論」がある
まず前提として、退職代行を否定する人たちの意見には一理あります。
- 「退職は自分の口で言うのが常識」
- 「会社に迷惑をかけるなんてあり得ない」
- 「社会人なら最低限の筋を通すべき」
こうした価値観は、これまでの社会では“当たり前”とされてきました。
特に年配層や上司世代の多くは、「直接話して、最後はきちんと挨拶して去るべき」と考える傾向が強いです。
確かに、自分の口で「辞めます」と伝えられるのが理想。
その理想が叶わない現実が、退職代行のニーズを生んでいるのです。
退職代行を“使わずに済む幸せ”に気づいていますか?
退職代行に強く否定的な人たちは、ある意味で“幸せ”なのかもしれません。
なぜなら、退職代行というサービスに頼らなくてもいい環境で働けているからです。
- 上司との関係が健全で、意思を伝えれば通じる職場
- 退職を申し出ても恫喝や引き止めがなく、尊重される風土
- 心身を壊すほどのストレスもなく、安心して辞められる環境
そうした“当たり前”が整った職場にいるからこそ、「自分で言えばいい」「そんなの甘えだ」と言えるのかもしれません。
でも、世の中にはそうじゃない会社が山ほどある。
「辞めたい」と口にしただけで怒鳴られたり、脅されたり、精神的に追い込まれる人もいる。
退職代行は、そんな“普通が通じない職場”で働く人たちの最後の逃げ道なのです。
それでも退職代行が必要とされる理由
退職代行は、ただ「面倒だから人任せにしたい」という軽い理由で使われるわけではありません。
実際には、こんな声が多くあります:
- 「上司に何度も辞めたいと言ったのに無視された」
- 「“辞めさせないぞ”と怒鳴られて怖くて何も言えなかった」
- 「体調が限界で、直接話すのも苦痛だった」
- 「退職届を出したら“損害賠償だ”と脅された」
こうしたケースでは、本人が意思を伝えようとしても伝えられない環境にあります。
自分ではどうにもできないからこそ、第三者の力を借りるしかないのです。
退職代行は、単なる“逃げ”ではなく、「正常な判断ができなくなる前に、自分を守る手段」として選ばれています。
「退職代行=クズ」と決めつけるのは短絡的すぎる
もちろん、マナーやモラルを無視して利用するケースもゼロではないでしょう。
しかし、その一部だけを見て「退職代行=クズ」「使うやつは頭おかしい」とレッテルを貼るのは早計です。
退職代行を使う人の多くは、数ヶ月、あるいは年単位で悩み続け、限界まで我慢してから決断しています。
- 「自分で言うべきと分かってる。でも無理だった」
- 「周囲に相談しても“甘えるな”と突き放された」
- 「辞めたい気持ちが罪悪感に変わってしまった」
こうした人たちが“クズ”でしょうか?
むしろ、自分と向き合い、ギリギリまで頑張って、それでもダメだったから手を伸ばした――そんな冷静さと勇気を持った人たちです。
価値観のギャップは「世代」や「働き方」の違いから
退職代行を批判する声の多くは、40代以上の管理職や、かつてブラックな環境を“根性”で乗り越えてきた人たちから出ています。
でも、働き方や価値観は時代とともに変わっています。
- 若い世代は“心と体を壊してまで仕事に尽くすこと”を美徳としない
- 「会社のために我慢する」より、「自分の人生を大事にする」考えが主流
- 転職市場の流動性が高まり、退職がネガティブでなくなってきている
こうした社会の変化と、旧来の価値観との間にギャップがあるのです。
このギャップが、退職代行をめぐる「賛成/否定」の分断を生んでいます。
メンタルを壊す前に“逃げる”選択肢があっていい
退職代行を利用して辞めたあと、「もっと早く辞めればよかった」と語る人は少なくありません。
そしてその多くが、「自分を守る決断ができてよかった」と言います。
精神的に追い詰められて、眠れなくなり、うつ状態になってしまってからでは遅いのです。
「辞める=逃げる=悪」という古い思い込みが、人を壊してしまう前に、適切な“逃げ道”を認める社会の柔軟さが必要です。
まとめ:「退職代行=頭おかしい・クズ」は、もはや古い考えかもしれない
退職代行を使う人すべてが正しいとは言いません。
でも、使う人すべてが「頭おかしい」「クズ」だという決めつけも、極めて乱暴です。
- 使わざるを得ない人がいる
- 自分の人生を守るための選択である
- 社会が変われば“当たり前”も変わる
退職代行というサービスは、現代の働き方や価値観の移り変わりに寄り添った“ひとつの選択肢”に過ぎません。
誰かを一方的に否定するのではなく、背景を知り、多様な働き方や辞め方を認め合える社会が、これからは必要です。
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