転職や就職をしたものの、「思っていた仕事と違った」「職場の雰囲気が合わない」「体調を崩してしまった」などの理由で、試用期間中に退職したいと考える人は少なくありません。ですが、試用期間中の退職はどのように進めればよいのか、マナーやルール、トラブルを避けるためのポイントを知っておくことが重要です。
この記事では、試用期間中に退職を検討している方に向けて、具体的な手順や注意点、円満に退職するためのコツを解説します。
試用期間とは?
試用期間とは、企業が新しく採用した社員の適性や能力、勤務態度などを評価する期間のことです。一般的には1か月〜6か月程度に設定されており、企業によって期間は異なります。
試用期間中であっても、労働基準法上は正社員と同じく雇用契約が成立しているため、労働者からの退職も正規雇用と同様に認められています。
試用期間中は企業から評価される期間でもありますが、従業員から会社を評価する期間でもあるのです。
試用期間中の退職は法律上可能か?
結論から言うと、試用期間中でも労働者はいつでも退職する権利があります。民法第627条では、期間の定めのない雇用契約の場合、退職の申し出から2週間経過すれば契約は終了できると定められています。
ただし、就業規則や雇用契約書に「退職は〇日前に申し出ること」などの規定がある場合は、それに従うのがマナーです。例えば「退職は1か月前に申し出る」などのルールが設けられていることもあります。
試用期間中に退職したい理由ランキング
試用期間中の退職理由として多いものをランキング形式で紹介します。
- 仕事内容が想像と違った
- 人間関係や職場の雰囲気が合わない
- 体力的・精神的にきつい
- 待遇・条件が入社前の説明と異なる
- 家庭の事情や健康上の問題
- 他にやりたい仕事が見つかった
これらの理由は誰にでも起こり得るため、無理をして働き続けるよりも、早めに見切りをつけたほうが良い場合もあります。
退職する際のベストな方法と流れ
試用期間中に退職する場合でも、社会人としてのマナーや手順を踏むことが大切です。以下の流れに沿って進めましょう。
(1) 直属の上司に口頭で相談
退職を決意したら、まずは直属の上司に口頭で相談します。突然の辞意表明ではなく、事前に「ご相談したいことがあるのですが、お時間をいただけますか?」とアポイントを取りましょう。
(2) 退職理由の伝え方
退職理由は正直に伝えることが大切ですが、ネガティブな理由をストレートに言いすぎないようにしましょう。
例文 「業務を経験する中で、自分のスキルや適性が業務に合っていないと感じ、このまま続けても貢献が難しいと判断しました。」 「体調面での不安があり、今後ご迷惑をおかけする前に退職させていただきたいと考えました。」
(3) 退職希望日を提示
企業側も業務の引き継ぎなどの準備がありますので、最低でも2週間以上の猶予を持って退職希望日を伝えるのが理想です。就業規則で定められている期間があれば、それに従いましょう。
(4) 退職届の提出
口頭で了承を得たら、正式に退職届を提出します。試用期間中でも形式としては必要です。書式は会社指定のものがあればそれを使い、なければ市販のフォーマットやネットのテンプレートでも問題ありません。
(5) 引き継ぎと業務整理
短い期間でも担当していた業務がある場合は、必ず引き継ぎを行います。後任がいない場合でも、マニュアルや業務の流れを文書化しておくと良いでしょう。
(6) 私物や会社備品の整理・返却
パソコンや制服、社員証など、会社から貸与された備品は忘れず返却しましょう。また、私物の整理も事前に済ませておきます。
試用期間中に退職する際の注意点
試用期間中に退職する際の注意点を代表的なものを挙げます。
無断退職は絶対NG
試用期間中でも無断退職は信用を失う原因になります。後々の転職活動や前職確認で不利になる恐れもあるため、必ず手順を踏んで退職しましょう。
契約内容の確認
雇用契約書や就業規則に「試用期間中の退職に関する条件」が書かれていることがあります。退職時の手続きや猶予期間について確認しておきましょう。
退職理由は簡潔かつ前向きに
ネガティブな退職理由でも、相手に悪い印象を与えないように工夫が必要です。「成長するため」「自分に合った環境を探すため」など、前向きな言い回しを心がけましょう。
社会保険や税金の手続き
試用期間でも社会保険に加入していた場合、退職後の健康保険の切り替えや年金の手続きが必要になります。また、転職先がすぐ決まらない場合は失業保険の申請も検討しましょう。
試用期間中の退職が言いにくい…そんな時に退職代行は使える?
試用期間中とはいえ、「辞めたい」と自分で伝えるのはかなり気まずい…そんなケースでは退職代行の利用も十分選択肢になります。実際に、試用期間中の依頼も退職代行には多く寄せられています。
ただし、「辞めグセがつく」「社会人としてどうなのか」と自責の念に駆られる人も多いのも事実。精神的な負担が強いなら、無理に自力で頑張る必要はありません。
- 「せっかく採用してもらったのに申し訳ない」
- 「上司に怒られるかも」
- 「職場の人間関係が悪くなりそう」
- 「“根性ない”と思われそう」
こういった気持ちは誰しもが感じます。特に試用期間は“お試し”という性質があるため、本音では合わないと感じつつも、退職を切り出せずに我慢してしまう人が多いのです。
試用期間中の退職は、決して「逃げ」ではありません。自分のキャリアや心身の健康を守るための大切な判断です。
どうしても言いづらい時は、退職代行という第三者を通じてスマートに辞める選択も十分あり。自分に合った退職のかたちを選びましょう。
ただし、試用期間中でも、会社側が就業規則で「退職の申し出は○日前に」と定めている場合があります。たとえ法的には2週間前に申し出れば辞められるとしても、トラブルを防ぐためには事前確認が大事です。
退職後の転職活動のポイント
試用期間中の退職は、転職市場でマイナスイメージを持たれることもあります。そのため、次の転職活動では以下の点に注意しましょう。
- 前職の退職理由は前向きに伝える
- 企業研究を十分に行い、同じミスマッチを避ける
- 面接では「学んだこと」「反省点」を伝え、成長意欲をアピール
転職活動において、過去の職歴は必ずしもすべてを詳細に伝える義務があるわけではありませんが、面接で「直近の空白期間について」質問された際に、嘘をつかず事実を簡潔に伝える姿勢は大切です。
まとめ
試用期間中の退職は、法律上も認められており、適切な手順を踏めばトラブルになることはありません。大切なのは、冷静に、誠実な対応をすることです。無理に続けて心身に支障をきたすよりも、自分に合った職場を見つけることが、長い目で見ればプラスになります。
退職後の転職活動も視野に入れ、前向きにキャリアを築いていきましょう。




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